労働者派遣法の「改正」に反対する声明
2014年3月31日
反貧困ネットワークあいち
1 政府は、本年1月29日の労働政策審議会の建議に基づいて、3月11日に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「法律案」という)を閣議決定して、同日付で、通常国会に提出した。
政府が提出した法律案は、現在の労働者派遣法が派遣期間制限について、専門26業務以外の一般業務については原則1年・最長3年と定めているのに対し、専門26業務と一般業務との区分を廃止し、派遣元との間で無期雇用されている派遣労働者については派遣期間制限を撤廃し、有期雇用されている派遣労働者については、派遣労働者個人単位では3年を上限としながら、派遣先が人を入れ替えれば無期限に派遣労働を利用することができるようにしようとしている。
これでは、直接雇用の原則のもと、常用代替防止を原則とし、臨時的・一時的なものに限り労働者派遣を認めるという、労働者派遣法の建前を投げ捨て、企業が好きなように労働者派遣を利用することができることになってしまう。
2 反貧困ネットワークあいちは、2008年のリーマンショックに端を発する「派遣切り」の蔓延により、多くの労働者が仕事や住む場所を奪われるという事態に追い込まれたことに対し、愛知県内で貧困をなくすために活動している団体・個人が連携して「愛知派遣村実行委員会」などの活動を始めたことをきっかけに結成された団体である。
私たちは、「派遣切り」に苦しむ人たちとともに活動したことを通じて、労働者が労務を提供する派遣先が直接使用者としての責任を負わない派遣労働においては、派遣労働者は景気の変動の影響を受けて物のように切り捨てられてしまうこと、派遣元も使用者としての責任を果たさず派遣労働者との契約を安易に解除すること、その結果、派遣労働者は生活の基盤である雇用の場をたやすく奪われるという極めて不安定な立場に置かれていることを痛感した。また、派遣労働者など非正規雇用労働者は、正社員に比して相対的に低賃金の状態に置かれており、ワーキングプアの温床となっていることも明らかとなった。
したがって、日本で貧困をなくしていくためには、労働者派遣など非正規雇用で働く人々が、安定して人たるにふさわしい労働条件・労働環境の下で働けるようにすることが極めて重要であると主張してきた。
3 現状でも、正規雇用労働者は3294万人、非正規雇用労働者は1906万人となり、前年よりも正規雇用労働者は46万人減り、他方で、非正規雇用労働者は93万人増え、労働者の37パーセントを占めるに至っている(2013年)。
今回政府が提出した法律案は、派遣労働をより拡大しようとするものであり、不安定・低賃金の雇用を原則的雇用形態として拡大し、日本における貧困をますます深刻にしていくものといわざるを得ない。
反貧困ネットワークあいちは、日本から貧困をなくすために活動するという立場から、政府が提出した法律案に強く反対し、登録型派遣の禁止、派遣労働者の均等待遇、常用代替防止原則の貫徹、派遣業務の専門的分野への限定など、人間らしい労働と生活を確保するための抜本的な改正を行うよう求めるものである。
以 上